勝ち筋見えた

「映画刀剣乱舞」観ました。

面白かった。初心者に刀剣乱舞を説明するならまずこれを見せればいいというくらい、仕上がっていましたね、世界観の説明も何もかも。

 

 

 

以下ネタバレ

 

 

映画化!!脚本・小林靖子!!!って出たときからもう祭状態だった今作。いや私。

特撮好きにとって、脚本が小林靖子氏ってそれはもう作品の完成度を約束されたも同然であり。だからもう映画の内容について面白くなかったらどうしようみたいな心配は一切なくて(とか言ってるけど公開前日になって急に映画爆死したらどうしよう…とかブルーになったりしていた)期待通りの面白さ、いや面白いだろうことは予想がついていて、もう気になってるのは、どんなロジカルでギミック満載のお話を見せてくれるのか?って部分だったので、そこが余すことなく満たされてすんごい幸せな気持ちになれる映画でした。

 

「刀」が主人公であることの意味が、しっかり見えたというのが一番の感想。

特に、数あるメディアミックスの中でも、三日月宗近の役回りをいちばん“三日月だからこそ”として描いてるなーと感じました。

クライマックスに明かされる、あの日あの時、秀吉の手元に在ったからこそ知っている物語、彼しか知らない物語、という種明かし、気持ちよすぎる。

三日月の、その来歴ゆえ三日月にしか知り得ない話を、「物が語るが故に、物語。」という着地点に落とし込めている美しさ。

信長の遺体は見つかっていないという史実に基づいて、実は本能寺ではなく安土城で死んでいるという創作設定の、リアルとフィクションのバランスの絶妙さ。

 

そのあたり含めて、常にダブルミーニングで展開していく映画でしたね。

信長の死の真相にまつわる薬研と三日月の分割カット「安土城…!」のシーンなんかは象徴的でしたけど、それ以外にも色々あったし、ラストは怒涛の重ね技ってかんじ。

 

・「物が語るが故に、物語」の導入テロップ

三日月宗近という刀だからこそ知り得る信長の死の真相/歴史を守る

・三日月の「行って参る」「只今戻った」

(これがさよならの挨拶かもしれない/任務を遂行し主の最後に間に合った)

・男士一同が会して審神者に向かって礼をするシーン

(新たな審神者に向かって/スクリーンの向こうにいる審神者に向かって)

・三日月の「主よ、また守るものが増えてしまった」と語りかけるラストのモノローグ

(新たな審神者に対して/前代の主に対して)

・ラストのタイトルバック「- 継承 -」

審神者の代替わり/歴史を守ることそのもの/あるいは続編あったりして)

・『皆に教えることで余計にリスクが高まる』と考えた三日月の行動全般

(信長の死が歴史通り完遂されるため/審神者の代替わりに際する本丸襲撃を危惧するため)

で、これには答えとして長谷部の「言わなかったんじゃなくて、言えなかった」というセリフもしっかり用意されているんですよね。爽快。

 

あと薬研の「それさえも守るべき歴史なんだ」っていうのは、まんま三日月の行動全てに繋がってますよね。信長のことも本丸のことも。

同じ手法でいうと、三日月の「何も考えず剣を振るうより余程良い」も、戦う意味を模索する骨食に向けた言葉でありながら、三日月の行動は全て考えあってのことですよという鑑賞者に向けた説明でもあり、時間遡行軍に操られている無銘を指してもいる、という……

 

なんやこの掘るほど気持ちいい脚本は〜〜〜〜〜〜!!!靖子〜〜!!!!!

 

刀剣乱舞というコンテンツの顔として存在しているキャラクターなので全メディアミックスに皆勤賞の三日月宗近ですが、看板という扱いが先行して役を背負わせられてるなと感じることも多くて、彼自身はどんな刀なのか?何を思い刀剣男士としての生をどう過ごすキャラなのか?みたいなところってこれまでどのメディアミックスでもあんまり深掘りされてる印象なかったのですが、常に一歩引いた所にいるミステリアスじじい以外にキャラ付けあんまりされないなーと思っていた三日月が、しっかり物語の中で生きるキャラとして色付けされていて、物語のためのキャラではなく、キャラの物語を描く(と勝手に思っている)小林靖子脚本ならではの良い作用だったなと思いました。

 

刀剣乱舞の上手いなーと思うところは、とにかくメディアミックスがたくさんあるところで、どれか一つでも刺さってくれれば原作を知るきっかけにもなるんですよね。

そんな中での、映画/脚本・小林靖子ですよ。

覚えてます?情報解禁の日のTwitterのトレンド。「小林靖子」一色でしたよね。なんなら彼女の歴代脚本担当作品とかまで挙がってきてましたよね仮面ライダーオーズっていうんですけど(オーズは人生の必修科目なのでよろしくお願いします)私のような小林靖子作品に踊らされてきた人間にとってはたまらない発表でした。

画的・心情的な盛り上がり所の作り方と、状況・設定説明、キャラクターの人間性や話の整合性の取り方が上手いんですよね。辻褄合わせの天才。(仮面ライダー電王でヒロインが急遽降板した時のハンドル切り替えもの凄かった)

バランスがいいから見ててストレスがない。ので、心ゆくまで世界観やキャラに感情移入して楽しめる。

 

はあ…楽しかった。楽しかったから週替わりの映画泥棒コラボを餌に毎週通ってしまう。